kinmokusei

金木犀

金木犀=Osmanthus=オスマンサス

金木犀

金木犀の属名Osmanthus=オスマンサスの語源はギリシャ語、osme=香り+ anthos=花。
夏が終わって彼岸花が咲き終わる少し涼しくなってきた頃に金木犀の香りは突然やって来る。

元々中国から渡来したその花は、姿が見えなくても強烈な印象を与える。
中国では月にはキンモクセイのような香り良き巨木があって、その花がいっせいに開花するから秋の月は金色に輝くと信じられていた。

月の内の桂のごとき

金木犀

日本ではこの話を元に和歌や文学に『月の桂』がよく出てくる。例えば万葉集にはこんなのがある。
志貴皇子の子で天智天皇の孫、湯原王が娘子に贈った歌二首のうちの1つ。

目には見て手には取らえぬ月の内の桂のごとき妹をいかにせむ

―湯原王,万葉集

見えているのに手に取ることができない月にあるという桂の木のようなあなた
いったいどうすればよいのだろう

もう1つは、
この歌の前に出てくる。

うはへなきものかも人はしかばかり遠き家路を還す思へば

―湯原王,万葉集

随分とつれないもんだね
せっかく会いに来たというのに遠い家路を追い帰されるんだから

そして、
今度は贈られた娘子が応えて贈った歌が二首続く。

ここだくも思ひけめかも敷栲の枕片さる夢に見え来し

―湯原王,万葉集

恋焦がれているからでしょう
開いている片方の枕にあなたが来る夢を見ました

家にして見れど飽かぬを草枕旅にも妻とあるが羨しさ

―湯原王,万葉集

家にいても仲睦まじいくせに
草を枕の旅にも一緒にいられる奥さまが羨ましいわ

今度は湯原王。

草枕旅には妻は率たれども匣の内の珠をこそ思へ

―湯原王,万葉集

そりゃあ草を枕の旅に妻を連れてはきているけれど
私は匣の中に大切にしまってある珠(あなた)のことこそ本当に大事に思っているのだ

わが衣形見に奉る敷栲の枕を離けず巻きて寝ませ

―湯原王,万葉集

わたしの代わりにこの着物をあげましょう
それを私だと思って枕元に置いておいて着て寝ておくれ

更に娘子が応えて贈った歌。

わが背子が形見の衣妻問にわが身は離けじ言問はずとも

―湯原王,万葉集

あなたの身代わりの衣は私への愛の証としてわが身に離さずにいましょう
でもね衣はね何にも語り掛けてはくれないけどね

更に湯原王が贈った歌。

ただ一夜隔てしからにあらたまの月か経ぬると心いぶせし

―湯原王,万葉集

たった一度追い返されて逢えなかっただけなのに
まるでひと月も経ったかのように心が乱れてしまうのだ

更に娘子が応えて贈った歌。

わが背子がかく恋ふれこそぬばたまの夢に見えつつ寝ねらえずけれ

―湯原王,万葉集

あなたがそんなふうにわたしに恋い焦がれてしまうから
あなたが夢に現れてわたしだってなかなか寝つけないのよ

更に湯原王が贈った歌。

はしけやし間近き里を雲居にや恋ひつつをらむ月も経なくに

―湯原王,万葉集

まったくもう近くの里にあなたはいるというのに
まるで雲の上にいるみたい離れているからひと月も経ってないのに恋しくて堪らないんだ

娘子のまた応え贈った歌一首。

絶ゆと言はば侘しみせむと焼太刀のへつかふことは幸くやあが君

―湯原王,万葉集

もう終わりだねと言えばわたしが辛いだろうと思って
あなたは本当にそれで良いの?焼太刀のようなうわべだけの関係を続けることが

湯原王の歌一首。

吾妹子が恋ひ乱れたり反転に懸けて縁せむとわが恋ひそめし

―湯原王,万葉集

あなたを口説こうとした恋がうまくいかなければ
糸車にかけた糸でたぐり寄せれ平常に戻れば良いだけと思って口説いたんだ

現実なのか?一人想像なのか?掛け合いなのか?はよくわからない。
ただ、なかなか面白い一連の相聞歌なのだ。

フジファブリック – 赤黄色の金木犀

金木犀

赤黄色の金木犀の香りがしてたまらなくなって
何故か無駄に胸が騒いでしまう帰り道

それじゃあ最後に1曲、フジファブリック2004年の3枚目のシングル『赤黄色の金木犀』。
もう20年近くもまえの歌になってしまったんだな、早いもんだ。

コメントしてみる お気軽にどうぞ!

タイトルとURLをコピーしました